
|

 |
最近読んだある漫画の中で出てきた、カッコイイ女性の名前はユリだった。そして彼女の姿に、私は昔々描いていた漫画のヒロインを思い出した。小学生の頃から漫画を描くのが大好だった私は、中学の時ユリ子と言う一人のヒロインを誕生させ、漫画を描く事に夢中になる。彼女は思春期の男の子の頭の中にいる、強くてカッコイイ、頭の良い憧れの美しい女性だ。
漫画同好会に入って、絵のヘタクソさを自覚したが、漫画を描く事はやめなかった。私は特に漫画家を目指していたわけでなく、一人遊びとして楽しみで描いていた。だから、評価されたり、うまくなろうと絵を学ぶのはあまり好きでなかった。高校に入ると同好会をやめ、彼女を主役に、自己満足でヘタクソな漫画を一人でこっそりと描くことに専念した。私は彼女を描くことで、世の中の常識や考えに捕われず、自分らしい自由な生き方を求め、自身を勇気づけながら、自立への道筋を模索していたのかもしれない。
デザイナー学院に入った頃から、漫画を描くのはやめ、イラストレーションに夢中になった。時代とともに、私自身の変化とともに、彼女は容姿を変え、創作の中に生き続けた。私が描く事をやめられないのは、今も彼女の幻を追いかけているからかも知れない。男の子の頭の中には、みんな彼女のような自分だけの女神がいて、勇気を出して生きていけるように見守ってくれているのだろうか?
最近「回帰大作戦」と称して、自身で描いた昔のイラストや漫画とコラボしたいと思うのは、あの頃の瑞々しい彼女に会いたくなったからかも知れない。ちょっと恥ずかしいけど、私の女神様を御開帳しょうと思う。橋本あやめのイラストパワーを纏い。
グラフィックデザイナー 橋本修一 2019年11月 |